パン生地の声に耳をすませば――無添加パンがくれる小さな贅沢

キッチンに立つと窓から差し込む光がなんだかやわらかく感じられる。それを横目に、今日はどんな朝食を用意しようかと考える時間は、僕にとってちょっとした贅沢だ。パンが好きで好きでたまらない僕は、最近はまっている「無添加パン」をテーブルの中央に置いて、その日の気分でアレンジを加えるのを楽しみにしている。
なぜ無添加パンなのか――。市販のパンコーナーにも美味しそうなものはたくさんあるし、ふわふわのロールパンやバターたっぷりの甘い菓子パンだって魅力的だ。だけど、無添加パンが持つ“小麦そのものの味”や“素材本来の香り”を味わってしまうと、まるでパン生地そのものが「この世界には、こんなにも奥深い風味があるんだよ」と教えてくれているかのように感じるから不思議だ。
パン生地の“やさしい秘密”
パンを作るうえで欠かせないのが、小麦粉・水・酵母。これらの組み合わせによって、膨らみ方や食感、そして香りが変わってくる。無添加パンの場合、保存料や添加物を使わずに、素材と発酵の力に頼るため、職人の技術と経験が大きくものをいう。パン生地は、ちょっとした温度や湿度の違いにも敏感だから、職人さんはそれを毎日観察しながら「今が焼きどきだ」と見極めるのだという。
生地のなかで酵母がぷくぷくと呼吸している様子を想像すると、何だか愛おしい気持ちにならないだろうか。発酵が進むにつれて、小麦粉のもつ自然な甘みや香りが引き立っていく。こうして生まれた無添加パンは、噛むほどに味わいが増すし、粉本来の滋味深さが舌の上にじんわりと広がるのが特徴だ。
新しい“パン巡り”スタイル
もともとパン好きの僕は、週末の楽しみとして街のパン屋めぐりをしてきた。石窯を備えた老舗や、自家製酵母をこだわり抜いた新進気鋭の店まで、いろんなパンを食べ比べるのが趣味だった。しかし、仕事が忙しくなると、なかなかパン屋をはしごする時間も取れなくなる。
そこで目を向けたのが“通販”という手段だ。ネットショッピングで「無添加パン 通販」と検索してみると、想像を超える数の店がヒットして驚いた。北海道の小麦を使う店や、九州産の天然酵母で仕込む店、山の湧き水を使って生地を練り上げる店……。こうした多種多様な背景をもつお店のサイトを巡っていると、それだけで“バーチャル旅行”のような気分になる。
アレンジレシピで楽しもう!
無添加パンは、素材の味がしっかりしているからこそ、アレンジ次第で新しい表情を見せてくれる。たとえば、先日僕が挑戦したのは「塩バターフレンチトースト」。通常のフレンチトーストにほんの少し岩塩を加え、あえて甘さを控えめに仕上げることで、パンの旨みとバターのコクが際立つのだ。
こうしたアレンジは、子どもにも受けが良さそうだと思う。普段から甘い菓子パンが好きな子どもには、はちみつやフルーツを加えてみると華やかになるし、少し大人びた味にしたいならシナモンやナツメグ、ココアパウダーなんかを入れても面白い。素朴な無添加パンがベースにあるからこそ、どんな味のバリエーションにも対応できる柔軟性があるわけだ。
さらに、ハード系のパンなら「オープンサンド」にしても楽しい。薄くスライスしてトマトソースやチーズ、野菜を乗せてトースターで焼くだけの簡単レシピだが、パン生地がしっかりしているからこそ具材との相性が抜群に良い。子どもに手伝ってもらいながら作ると、キッチンがちょっとした“実験室”のように盛り上がること間違いなしだ。
無添加パンで学ぶ「食べることへの感謝」
子どもたちが無添加パンに惹かれるのは、健康面だけではないと思う。パン生地の優しい香りや、素材そのものの味がしっかり感じられる食感は、まだ味覚が敏感な子どもたちにとって新鮮で、大人以上に「これ、おいしい!」と素直に反応してくれることも多いはず。そんな姿を見ていると、大人としても「やっぱり素材が大事なんだな」と再認識させられる。
しかも、無添加パンを通じて学べるのは「食べることへの感謝」だ。保存料に頼らず、こだわりの酵母や水、小麦粉で作るパンがテーブルにのぼるまでには、職人さんの努力だけでなく、農家さんが育てた小麦や自然の恵みも関わっている。それを子どもと一緒に話題にするのは、ある意味“食育”の一環かもしれない。「このパンってどこで作られてるんだろう?」「このパン屋さんはどういうこだわりがあるの?」と問いかけるだけで、子どもは目を輝かせて興味を示してくれるかもしれない。
パン生地が繋ぐ、日常のやさしさ
僕は、無添加パンを食べるときの“ふわりとしたやさしさ”こそが、この食べ物の最大の魅力だと思っている。口に入れた瞬間、小麦と酵母の調和がスッと広がり、何とも言えない安心感を与えてくれる。仕事で落ち込んだ日でも、「ああ、明日の朝はあのパンを焼こう」と思えるだけで気持ちが上向くことがあるのだから、食べ物が持つ力は本当にすごい。
そして、通販を利用すれば、こうした無添加パンを全国どこからでも手に入れられる時代になったのは嬉しい限りだ。気になるパン屋を見つけたら、ぜひ一度試してみてほしい。画像や口コミではわからない“本当の味”を、家のキッチンでゆっくり味わう――そんな小さなことで、日々の暮らしをちょっとだけ素敵に変えてくれるはずだ。
結局のところ、パン生地に触れることは、人の手のぬくもりと食材の力を再確認する行為に近いのかもしれない。無添加パンという存在は、それをシンプルな形で表現してくれる優れたツールだと思う。だからこそ、僕はこれからも、ふらりとネット通販を覗きながら、無添加パンの新たな発見を探していくつもり。いつか、全国各地のパン屋を巡り歩きながら、“パン生地が繋いだ物語”を一冊の本にまとめてみたい――そんな夢を抱きながら、今日もまたオーブントースターに無添加パンをそっと入れる。