無添加パンの香ばしさが運んでくれるもの
街で見つけた小さなパン屋
ある週末の午後、久しぶりに街を散策していた。メインストリートから少し外れた通りを歩いていると、ふと甘く香ばしい匂いが鼻をくすぐる。振り向けば、レンガ造りの小さなパン屋が目に留まった。ガラス扉の奥では、やわらかな照明に包まれながら職人さんが生地をこねている。思わず「こんな所にパン屋なんてあったっけ?」と、自分でも意外な発見に心を弾ませながら店内へ足を踏み入れた。
扉を開けると、バターやイースト、粉のやさしい香りが混ざり合い、胸いっぱいに広がる。棚にはクロワッサンやバゲットなどの定番が並ぶかと思いきや、「全粒粉」「無添加」と書かれた手書きのタグが目を引いた。「どれがおすすめですか?」とたずねると、年配の女性店員さんが笑顔で教えてくれる。「うちはできるだけ子どもにも安心して食べてもらえるよう、無添加で素材の力を引き出すことを大切にしてるんですよ。酵母も自家製。ちょっと日持ちはしませんけど、その分、本来の味わいが楽しめます」。
無添加・全粒粉との出会い
全粒粉や酵母といった言葉は、正直それまで少し敷居が高い印象を持っていた。しかし、店員さんのゆったりした口調や、ふわっと広がるパンの香りに触れると、なんだか身近に感じるから不思議だ。ふと見ると「子どもにも安心」「添加物不使用」といったポップがあちこちに貼られている。忙しい日々の中、こうして新しい店をのぞくのは久しぶりだから、たくさんの発見が新鮮に映った。
会計の列に並んでいると、小さなチラシが目に留まる。“ネット通販も実施中”とあり、希望に合わせて全国へ発送してくれるという。「甥っ子と姪っ子が来るんです。忙しいときにも、こういう無添加パンを取り寄せられるのはありがたいですね」と言うと、「ホームページに簡単なレシピも載せていますよ」と店員さんが笑顔で答えてくれた。帰り道、紙袋いっぱいの全粒粉パンを抱え、早速スマホで“無添加パン 通販 全粒粉”と検索してみると、全国には同じようにこだわりを持ったパン屋がたくさん存在していることがわかる。ネット上でめくるめくパンの世界を見つけた瞬間だった。
帰宅して、ずっしり重たい全粒粉100%の食パンを切り分け、軽くトーストすると、外皮の香ばしさがふわりと立ち上る。噛むほどにほのかな甘みがにじみ出るその食感は「大地の恵みをそのままいただいている」ようだ。保存料や添加物なしでここまで味を引き出せることに驚き、次はどんなパンを試そうかと早くもわくわくする。
ネット通販で広がる“こだわりパン”の世界
翌日、時間を見つけて通販サイトをじっくりのぞくと、全国各地のパン屋が無添加や全粒粉、天然酵母にこだわり、一つひとつ丁寧に発酵・焼成している姿が伝わってくる。どの店にも独自のストーリーやレシピがあり、レビューには「小麦が苦手だった子でも食べられた」「安心して子どもに与えられる」といった声が並んでいる。自家製酵母やホシノ天然酵母、湯種製法など、聞き慣れない単語もあるが、要は大量生産ではなく、ゆっくり時間をかけて素材の力を引き出すのが大切らしい。パンを買うだけでなく、その背景を知る楽しさが、思いがけず私の“パン熱”を高めてくれた。
そうしているうちに数日後、実際に取り寄せた無添加パンのセットが届く。段ボールから取り出した瞬間、袋越しにも豊かな香りが広がり、まるで宝探しのように心が躍る。外はカリッ、中はもっちりのバゲット風から甘めのロールパンまで盛りだくさん。子どもたちと食べるのを楽しみに取っておこうと思いながらも、待ちきれずひと口。酵母特有のやさしい酸味や全粒粉のナッツのような風味が口いっぱいに広がった。
各店のホームページには、パンを使った簡単レシピが豊富に紹介されている。アボカドをつぶしてトーストに塗ったり、ハムやチーズでホットサンドを作ったりするだけでも、ちょっとした贅沢気分を味わえる。忙しい日常でも手間をかけずに特別感を演出できるのが、パンならではの魅力なのだろう。
無添加パンのある暮らしがもたらす人生のワクワク
気づけば「無添加パン」や「天然酵母」を探す行為そのものが、一種の冒険のようになっていた。街角でふらりと立ち寄るパン屋もあれば、ネットで知る遠方の名店もある。そのどれもが作り手の情熱やストーリーを内包していて、食卓をひときれ分だけ豊かにしてくれる。子どもにも安心、大人も満足できるパンがあるなんて、考えてみれば当たり前のようで、実は新鮮だ。
こうして“無添加・全粒粉・酵母”をめぐる旅が始まったわけだが、まだまだ全国各地に素敵な店は潜んでいるだろう。思いもよらない味や香りとの出会いは、検索を続けるたびに増えていく。そのたびに小さなワクワクが胸の内に育っていく。このワクワクが日常に彩りを与えてくれる。そして思う。この彩りのある生活が、ちょっとした幸せなのだと。